近江米振興協会カントリーエレベーター(CE)特別部会では、今年度も、施設における衛生管理や事故リスクの啓発等の取組を進めていきます。
さて、令和5年11月には他県においてかび毒(DON)の基準値を超過した小麦が流通し、その原因として、水分値の高い小麦を荷受けしたこと、乾燥・調製施設での過剰な受け入れに伴い乾燥に日数を要したこと等があげられます。消費者や実需者における食の安全・安心への関心が高まっていることから、CE等の適切な運営管理による事故リスクの低減や品質向上に向けた対策を徹底しましょう。
また、CEサイロ内籾の穀温に変化はないでしょうか。真冬に発生した結露による事故の発見は春先が多いので、籾保管しているCEは「穀温変化」と「サイロ内の結露確認」を怠らずに実施して下さい。
特にCEの品質事故もJAの管理者や経営者層は、オペレーターに任せたままのケースで事故が起きる事が多く見られ、管内で最も多額の農産物である米を貯蔵しているCEへ管理者や経営者層は関心を持って気配りを頂きますようお願いします。
今後の保管管理には下記事項にご留意の上、十分な注意と対策が必要です。
穀温と外気温との差が10℃を超えていないかをチェックし、超えていれば速やかにローテーションを実施して下さい。再度「サイロ内籾の穀温チェック、および穀温と外気温度との差」の確認を行い、穀温上昇の兆候がある場合は直ちにローテーションの実施をお願いします。
出庫前(籾摺り前)には、先ずサイロ内の結露確認を行って下さい。
酸素欠乏危険作業主任者の指示にもとづき、サイロ内に結露が発生していないか確認を行い、もしも結露が発生していた場合は、品質劣化籾と正常籾との混合を避けるための措置を行って下さい。
(排出作業はロープ、バケツ方式等で)
4月以降に出庫予定の籾の管理は、出庫予定の籾を一旦別容器(別のサイロやDSビン又はタンク)に移し替え、外気の温湿度に馴染ませ、少なくとも5時間以上放置した後に籾摺りを開始して下さい。
外気温度とサイロ内籾の穀温との差が、3~4℃以内であれば結露の心配はないことになりますが、それ以上の差がある籾を出庫する場合は上記操作が必要です。
今年度の取り組みを下記に紹介していますが、この時期だけ取り組めばよいということではなく、年間を通じて取り組む必要があります。特に、4月~6月は、冬から春への季節の変化に伴う外気温の上昇や、梅雨に入ってからの湿度の上昇により品質管理が難しくなること、さらに梅雨前線による大規模豪雨やゲリラ豪雨による水害が懸念されるため、徹底した品質保全と水害事故の防止が必要です。
農業倉庫などの米麦等保管施設に対しても一層の衛生管理の取り組みを求められているので、この強化月間を機に「JAグループとして自主的衛生管理の取り組みについて」を確認して実行していく必要があります。
期間:4月15日~6月30日
① 保管管理体制の整備
② 【重点取り組み項目】 保管米麦の品質保全とカビ防止・防虫・防鼠
③ 【重点取り組み項目】 保管米麦の水害事故の防止
④ 【重点取り組み項目】 自主的衛生管理の実行
「5S 整理・整頓・清掃・清潔・習慣」と「保管管理日誌の記帳」など
⑤ 保管管理点検表による点検の実施ならびに自主管理マニュアルに基づく確認
⑥ 誤出庫・表示押印漏れ事故の防止および数量管理の徹底
⑦ 労働災害事故の防止
彦根気象台、平成26~令和5年の平均値との比較
月 | 期間 | 平均気温 | 日照時間 | 降水量 |
2月 | 上旬 | 高い | 平年並 | 平年並 |
中旬 | かなり高い | 平年並 | やや少ない | |
下旬 | 平年並 | やや少ない | かなり多い | |
3月 | 上旬 | 低い | 平年並 | 平年並 |
中旬 | 低い | 平年並 | やや多い |
平均気温 <±0.5℃:平年並、±0.5~1.0℃:やや高い(低い)、±1.0~2.℃:高い(低い)、±2.0℃<:かなり高い(低い)
日照時間 <±5hr:平年並、±5~10hr:やや多い(少ない)、±10~15hr:多い(少ない)、±15hr<:かなり多い(少ない)
降水量 <±10mm:平年並、±10~20mm:やや多い(少ない)、±20~30mm:多い(少ない)、±30mm<:かなり多い(少ない)
令和6年産(5年播)麦類作況調査
品種名 | 年次 | 2/14調査 | 3/15調査 | ||||
茎数 (本/㎡) |
草丈 (㎝) |
葉数 (枚) |
茎数 (本/㎡) |
草丈 (㎝) |
葉数 (枚) |
||
びわほなみ | 令和6年産 (平年比) |
986 (110) |
24.9 (105) |
7.0 (+0.3) |
854 (108) |
42.7 (103) |
8.4 (+0.2) |
平年値 | 895 | 23.8 | 6.7 | 789 | 41.6 | 8.2 | |
ふくさやか | 令和6年産 (平年比) |
768 (120) |
24.5 (105) |
7.1 (+0.7) |
696 (110) |
44.5 (117) |
8.5 (+0.5) |
平年値 | 639 | 23.4 | 6.4 | 631 | 37.9 | 8.0 | |
農林61号 | 令和6年産 (平年比) |
960 (134) |
28.8 (118) |
6.9 (+0.7) |
870 (127) |
44.6 (121) |
8.3 (+0.4) |
平年値 | 717 | 24.5 | 6.2 | 687 | 36.3 | 7.9 |
※ 播種日:令5年11月8日
※ 播種量は8㎏/10a 条播(条間25㎝)。
※ 平年は平成26~令和5年産(平成25~令和4年播)の10年間平均値。
※ 「びわほなみ」の平年は平成28,30年~令和5年産(平成27,29年~令和4年播)の7年間の平均値。
○ 3月上旬~中旬の気温が低く、進んでいた生育はやや停滞しており、平年と比べて5~7日程度早い生育進度となっている。
○ 平年と比べて播種時期による生育の差が大きい。
○ 二条大麦の生育が早いほ場では穂揃期となっている。
○ 排水不良は、根の伸長が不十分となって登熟期にまで影響が及び、収量及び品質低下を引き起こすので、溝に水がたまる場合は溝さらえを行うなど、引き続き徹底した排水促進に努める。
○ 六条大麦では子葉が出始めた頃 (農技センター作況調査の予測では3月30日頃)に窒素成分2kg/10a程度を4月上旬までに施用する。施用時期が遅れると硝子粒の発生が多くなるので注意する。
○ 基肥一発体系の場合は子葉出葉追肥を施用する必要はないが、葉色が極端に淡い場合は早急に施用する。
○ 小麦の実肥は開花期(出穂10日後頃)に窒素成分で3~4kg/10aを施用する。ただし、茎数の少ないほ場(約300本/㎡以下)では窒素成分で2~3㎏/10aに減らす。
○ 3月中旬時点で生育は平年より5~7日程度早く進んでおり、向こう一か月の気温も平年より高くなる確率が70% (3月21日大阪管区気象台発表) と予報されていることから出穂期は平年より早くなることが予測される。
○ 3月中旬時点では実肥施用適期は11月中旬播種「びわほなみ」で4月中旬と予測しているが、播種時期や地域により生育に大きな差があるので、気象予報に注意を払いながら、麦の出穂、開花状況を見て対応する。
○ 小麦(びわほなみ)及び六条大麦は開花始め~開花期とその7~10日後頃に農薬を散布する。
○ 小麦(びわほなみを除く)は開花始め~開花期に二条大麦は穂揃い10日後頃に農薬を散布する。
○ 農薬散布後に気温が高く曇雨天が続く場合は、防除効果を高めるため、直前の散布の7~10日後頃に雨のやみ間を見て追加防除を行う。特に「びわほなみ」では3回目の農薬散布に向けて準備する。
(留意点)
○ 今作は生育が進んでいるため、出穂期は平年より早くなると予想されるが、必ずしも出穂に連動して開花が早まるとは限らないため、出穂後の気温と開花状況をよく確認し、天候等に注意を払いながら適期防除に努める。
○ 「びわほなみ」は赤かび病に弱く、「農林61号」より開花時期が5~6日早いので、防除が遅れないように注意する。
以上